Lonely Lonely Lonely
突き放されるなんて……経験したことがないに等しいから、私はつい、ムッとしてしまった。
「じゃあな、俺、忙しいから。あいつのことは、泣かさないでくれな」
最後まで、つっけんどんな正樹先輩だった。
あいつ、って、弟のことだよね?
あいつのことは、って、どういうこと?
気がかりなセリフ……。
私達の久々の再会に気を使ってくれたのか、
入れ違いに、弟の誠がやって来た。
「お待たせ~。ラーメンと半チャーハンです」
「あらあら、あなたが運んでくれるなんて」
「気にしないでください。自分がやりたくてやってるだけなんで。もう、飲んでました?あれ?減ってないっすね」
「あ……だって、あなたが来ないから」
うまい言い訳。
最初のひとくちから、飲む気分も失せたなんて言えないし。
「あっ俺のラーメンと
ビールも来ました!じゃあ、瑠璃子さんとの出合いに、乾杯っ」
カチンッと私達はグラスを当てた。
私は自然と、笑みがこぼれていた。
まったく、今日は完全に彼のペースだな。
モテるんだろうな、この子。
「ねえ、誠くんて、結婚してるの?」
「してないですよ」
「あら。でも彼女は、いるんでしょ?」
彼はきちんと、ひとくちひとくち、食べ終えてから返事をする。
「いや~。ここ3~4
年いないんですよね~」
「もったいない。あなた、モテるでしょう?かなり」
「とんでもない!全然ですよ」
謙虚な笑顔だが、それを魅力的と感じない女は異常だ。
いいね。この子、なかなかいいね。
しかし、彼を知るには、ラーメン一杯では足りない足りない、全然足りない。
「瑠璃子さん、うち、自家製キムチも
自慢なんですけど、どうですか?
あっ、でも、仕事が……」
「明日は定休日。キムチは大好きよ。いただくわ。ビールも追加で」
「はいっ」
と、また自分でオーダーに行きそうな彼を制して、私は手元のコールボタンを押した。
「たまには、ちゃんと客になってみれば?」
そんな声をかけながら。
「え、ああ。そうですね。すみません、落ち着きがなくて」
「ううん、いいの。気持ちはわかるから」
そんな話をしているとすぐにオーダー担当の女の子が来た。
あきらかに緊張気味ではあったが、にこやかな対応で、
印象は良かった。
「合格だな」
と誠は呟いた。