Lonely Lonely Lonely
泣き落とし、なんてするつもりじゃなかったのに、涙が、こぼれ落ちてしまいました。
「ああ……ごめんごめん。高速なんて、めったに使わないんだよ。でも今日は、約束の時間、ヤバくなってたから、仕方なくて。スピードも、ついつい……。
ごめんな、怖い思いさせて。でも、これからは大丈夫。高速使うことはないよ。
それから、スピードも気をつける。
だからだから、もう、泣くなよ。
寝よう。もう、な」
弁護士をめざしていた彼は、説得上手だったから?……いやいや、単に私が彼を大好きだったから。
すぐにその胸に飛び込み、そのまま眠りにつきました。
まだ、二人とも幼い頃の話です。
その後も、樹はツーリングに出ることが多かったのですが、私が同乗することはなくなって行きました。
それはそれで、良かったようです。
ツーリング仲間には、女子もいたようだから。
「女の子のライダー、カッコいいよね!」
と私が言うと、
「そうか~?みんな、ガサツだし、色気もなくてカッコいいなんて思ったことないよ。
まあ、先輩も後輩もない、仲間って感じだからなあ」
ツーリング後に、写真を見せてもらうと、正直、うらやましいと思うことが多かったです。
美しい景色や、仲間との食事。
素晴らしいご馳走じゃなくても、みんなで山のふもとで食べたかけうどんは、最高だった、
なんて話を聞くと……。
いいなって、私は思いました。
できることなら、私も行きたいと。
でも、それは無理でした。ライダーでなければ、意味がないのだということを、私は知ったので。
でも私は、ライダーにはなれませんでしたから………到底無理でした。
だから気持ちを切り替えて、樹のツーリング時は読書をしたり、カフェへ行ったりして気分転換していました。
卒業後も、そんな付き合い方でした。
私は地元で養護学校の教師になりました。