Lonely Lonely Lonely

「めぐみちゃん、めぐみちゃん。これからA総合病院に来れるかい?樹が、樹が……」



仕事中(幸いお昼休み中でした)携帯に入ったのは、樹のお母さんからの電話でした。



ひどく取り乱した様子に
嫌な予感が走りました。





樹は昨日から、



「久しぶりにナベたちから誘われた」



と喜んでいました。



ナベというのは、大学時代のツーリング仲間です。私も面識がありました。



樹がツーリングに行くのは、正直、嫌でしたが、
ここのところ仕事仕事、と忙しくしていたから、たまには気分転換も必要かと、


早朝、嬉しそうに出ていく樹を、寝ぼけまなこで見送ったばかりだったのです。



私達は結婚を意識して、お付き合いをしていたので、
お互いの両親に挨拶済みでした。



了承の上で、半同棲してました。



「めぐみちゃん、めぐみちゃん……」



さらに震えていく母の声が、不安を掻き立てました。



その後、お父さんが状況を説明してくれました。お父さんは、比較的冷静でした。



樹が、一般道路を走行中、子どもが飛び出してきたため急ブレーキ。子どもは無事でした。しかし、それに気付かなかった後ろのトラックが…………。


仲間達は、前を走っていたから皆無事だったけど、樹だけがね……。


身体中、特に頭をひどく打ったらしくて、もう……。



「わかりました。これから向かいます。ただ、何時頃になるか……」



A総合病院は、隣の県でした。新幹線を使わなければいけない。
間に合わないかもしれない。



直感で、そう思いました。



嫌だ、そんなの絶対に嫌!



私まだ、あなたに言ってない。
あの日聞かれた大事なこと……。


答えてあげてないんだから!
聞いてほしいんだから!









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