Lonely Lonely Lonely

母とるりちゃんは、手を取り合っていました。


るりちゃん……かなり、やり手ですね。



「これ、割引券が付いているのね。私も行っていい?」



「もちろんですわ~。お母様。お友達にもよろしくお伝えくださいね。ウチ、アンチエイジングの化粧品も提供しておりますので~」




「あら、素敵!」



完全にカモですね。



るりちゃんの視線が、私に移りました。



ヤバイです。もう、数ヶ月、美容院には行っていません。



「グミ、あんたは、割引券より安い方法があるから、言うこと聞きなさいよ。


あんた、その髪、半年以上、ろくな手入れしてないね。明日、10時にうちのサロンに来なさい。


カットモデルになってよ。若い子の。もちろん、仕上げは私がやるから、大丈夫。
いいわね。こっちはモデルが必要だし、あんたは、タダで今どきの髪型にしてもらえる。


その、カッパみたいな無駄に長い髪、バッサリ行くけど、いい?



さっぱりするよ。グミは、その方が
絶対可愛いから」


「……わ、わかったよ。行く……」



迫力に押されました~。るりちゃんは、相変わらずだなぁ、と思いました。



でも、これくらいの強引さがなければ、
お店のオーナーなんて務まらないのではないかとも思えました。



「あら、そういえば、仕事は?冬休み?」



だよねだよね。変に思うよね。
今日も明日も平日なのに、
2つ返事だなんて。



「仕事、辞めたの。今は、いつも家にいる




「そう。事情は、明日聞く。
じゃあね」





さらりとそう言って、るりちゃんは、去って行きました。



さすがだなあ、と思いました。




私の身に何かあったことや、これから食事に行くことを察してくれる、勘の良さ。
そしてさりげなく去る、気遣い。



昔と変わらない優しさ。相変わらず、なんだなあ。



なんだか私は、明日、サロンに行くのが、楽しみになってきていました。








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