Lonely Lonely Lonely
無駄に長い、そう言われた私の髪に
ハサミが入った時、
不覚にも、涙をこぼしてしまいました。
それに気付いた若い男性美容師は、
「えっ、あれっ?大丈夫ですか?
うわ、困ったなあ。るり子さ~ん!」
ちょっとパニくったようでした。
すると、レジの方で指導をしていたるりちゃんがすぐに来てくれました。
「どうしたのっ!……あら、まだ全然仕上がってないじゃない」
そして鏡に映った私の顔を見て、
「あれ、やっぱり、切るの嫌だった?」
心配そうに、そう聞いてくれました。
私はハンカチで顔を拭い、
頭を左右に振りました。
「私の長い髪。確かに、無駄に長かった。元カレがね、好きだったから、伸ばしてたの。もう、いなくなっちゃったから、意味ないのにね。フフ……」
「ああ……別れちゃったんですね。それは無駄無駄、切っちゃえ、切っちゃえ」
勢いづいていた若い美容師を、るり子が制しました。
あんたは黙ってなさい!と言わんばかりに。
そんな中で、私は打ち明けました。
「ううん、別れたんじゃないの。死んじゃったの。事故でね」
「ああ、じゃそれでですか……。てっきり、ボクじゃ嫌なのかなあと思ってしまっ……」
「 前川、あんた今日はもういいわ。ほかのモデル見つけてくるから。あとは私がやる」
るりちゃんの口調は少々厳しめでした。
「えっじゃあ、ボクは何をすれば……」
「自分で考えなさい!レジ 見て小銭が少なければ両替に行く!予約表 見て、お茶の準備する!それから、一番大事なのが、」
「あっ、トイレ掃除!」
「よろしい。さっさと行きなさい」
言われて、彼はピューッとレジへ向かいました。
「まったくもう、今の子は言われなきゃわかんないんだから……。がっかりしちゃうよ。私なんか自分から率先して掃除してたのになあ。」
嘆きながら、るりちゃんは軽やかに私の髪をカットしていました。
「まだまだ素人同然だからさ。お客様への気遣いってのができなくて、申し訳なかったね。自分のことでいっぱいいっぱいなんだ。あの子、まだ。だから、ごめんね」
「いいよ、仕方ないよ、まだまだこれからでしょう。私、あの子でも良かったのに。逆に悪かったね。カットの練習で
きなくなっちゃって」
「いいのいいの。カットモデルになりたがってる子、沢山いるから。それに、あの子はもう、練習しなくてもいいぐらいになっているんだ」