Lonely Lonely Lonely

「うわあ、すっごい。軽くなった~!」



肩甲骨の辺りまであった髪が、肩上までカットされました。



そりゃあ、軽いです。



「いいですね。とても似合っていますよ」


前川くんも、そう言ってくれました。



「でも、このブロー、自分でできるかなあ」



「大丈夫ですよ。この、サイドの部分でしょ?ブローしやすいようにカットされていますから……。もし自信がなければ、次回軽めにパーマをかけてみるのもよろしいかと……」



そう言いながら前川くんは鏡を見ながら私の髪をくしゅくしゅっとして、



「ほらね。かわいい!でしょ?」



ニコニコしながらそう言うのだ。
もはや、つい先ほどまで、オーナーに怒鳴られて、泣きそうになっていた彼とは思えない。



私、またもや、つられ笑い。



「そうね、ゆるめにパーマかけておくのも、いいかも……。次もまた、お願いしますね」



「はいっ。ありがとうございます。……、って、ボク?」



私は、うんうん、と頷いた。



「ボクでいいんすか?カットしたのは、るり子さんですよ」



「パーマを勧めてくれたのは、あなたでしょう。お願いします」




「は、はいっ。喜んで!」



「前川~、嬉しいのは分かるけど、声大きすぎ。うるさいわ~居酒屋じゃないんだから~」



そう言う女性スタッフは、



「初指名、おめでと」



とつけたしました。



初指名、か。初々しいはずだ。
多少不安はあるけど、私はもともと髪型に執着がないから、
美容師は正直言って誰でもよいのです。



万が一何かあったときは、るりちゃんが、なんとかしてくれるだろうし………。



「ありがとうございます!また、お待ちしております」



前川くんの丁寧な挨拶と、るりちゃんからの手紙を受けて、



その店をあとにしました。



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