Lonely Lonely Lonely
「先生ね。転勤して、今この街にいないのよ」
瑠璃子が話し始めた。
いつも、突拍子なく話し出すんだから……。
「どこにいるの?」
「I市」
「え~。遠いね」
「そうだね。でも専門の時も、遠くて会えなかった。私が帰省した時だけ会って、食事して、セックスして、帰る。
そんな感じ。
私が海外にいた時は、メールだけの仲だったけど、先生は、よくメールをくれた。不思議なんだけど、あの頃が一番愛されていた気がしたなあ。
今はまた逆戻り。お互い忙しいし、休みも合わないし、会えるのは、むこうが会議でこちらへ来る時ぐらい。
そして、やることは同じ。
これは、不倫か?
年に2回か3回ぐらいよ。会えるのは。
私は愛人か?
最近は、愛されてる感じが全くしないけど。以前はそれなりの愛を感じたけどね」
やっと話が途切れた
「それなりの愛……?」
私とグミの声が、ちょうど重なった。
「そう、それなりに、愛されていたよ。
瑠璃子は可愛い可愛いって。できればずっと手放したくないって。よく言ってくれてた」
「そうなんだ……」
あの星野が……。
私達は、当時仲良しではあったけれど、そこまで生々しい話は聞いたことがなかった。
「でもね。愛しているとは一度も言われたことがないよ。当然だろ、って言われそうだけどさ。なんらかの形で、愛されたいって思うのよ。
もう、私が大人になっちゃったからなのかな?可愛いって言ってくれなくなったのは。それとも、そんなふうに思ってくれなくなっちゃったのかな」
違う。
ふと、そんな言葉が浮かんだ。
違う、きっと、違うと思う。
「気を悪くしたらごめん。確かに先生は、瑠璃子が、グングン大人の女になってきたことに抵抗を感じているのかもしれない。
けどそれより、心配なんじゃないかなあ。瑠璃子のことが。
だって、もう、私達、いい歳じゃん。
だから、I市に行ったのも、もしかして……」
そこまで言ったら、グミに制された。
「自ら志願して行ったんじゃないかって言いたいの?……、うん、そうかもしれないと、私も、思ってるよ。どうすればいいのかなー」
「もう会わないのが一番いいと思います」
ズバッと、グミが言った。
「わかってるんだけどね~。無理なのよ」
「なんで!?」
今度は私が、
身を乗り出した。
「なんで無理なのよ、瑠璃子!」
私の怒鳴りに、諦めの表情をした瑠璃子が、冷めたように言った。