Lonely Lonely Lonely
どうりで、なんだよ!と突っ込みたかったのだが、
瑠璃子に遮られた。
「ちょっと、気になることがあるんだけど……。
さっき、ミルクって、呼んでたね。みくのこと。それって中学時代の呼び方?」
涼のチークに興味を示したのか、彼の頬をなぞりながら瑠璃子はそう言った。
「そうだよ。えっ、今は違うの?」
さりげなく、瑠璃子の手を払いながら、涼は言った。
さすがの涼も
瑠璃子に触れられて、ドキッとしたか。
「今は、違うわよ。なぜかというと、みく本人が、私には、ニックネームなんて、なかった~って言うから。そんな素敵な呼び方があったなんて、知らなかったし、ね、ミルクちゃん」
「やめてよ~瑠璃子!
嫌なのよ、それ。子供っぽくて」
「なにい~!!俺がつけたアダ名なのになあ」
「そうだったっけ?忘れたよ、もう~」
「仲がいいいのね」
私達を傍観しながら、瑠璃子はスルスルとワインを飲んでいた。
「全然、仲良くない!」
私は思い切り否定した。
涼は、苦虫を噛んだような顔をしていたが、無視した。
「だって、仲良しだったら、仲良しだったら……」
当時の想いが甦り、涙が出そうになった。
「何も言わずに消えたりしないでしょう?」
必死で、その言葉を吐き出した。
やっと言えた。と、思った。
「ああ、ごめんな。あの頃、色々あってさ……」
一体、何が?
どんなことがあったの?
でも涼は感慨深げな顔をして、なかなか口を開いてくれなかった。
そのうち、
「涼さん、お電話です」」
店員2号から呼ばれた涼は、カウンターへ戻ってしまった。
「ごめん。またね。今度ゆっくり話そう。また、来てね。瑠璃子さんと、グミちゃんもね」
そんな挨拶を残して。
涼は電話が終わると、カウンターの客に捕まり、こちらへは戻って来なかった。
軽やかにシェイカーを振り、次々色鮮やかなカクテルを作り上げている姿に、
隣のテーブルの女史がうっとりしていた。
「女性なのに、すごいね」
の声が漏れてきた時は、思わず笑ってしまいそうだったが。