Lonely Lonely Lonely
沈黙を破ったグミの言葉は、
意外と瑠璃子には効いたか。
「あら、そうだった?ごめんなさいね~」
なんとも、なげやりな謝罪のすぐあとに、瑠璃子は、すくっと立ち上がった。
「ごめん、私、帰るね」
ええっ!!もしかして気を悪くした?
「なんで?るりちゃん、まだ来たばっかりよ!」
「ごめんね、グミ。貴志さんが来てる」
タカシさん?
「……そう」
えっ、グミ?いいの?
「これ、支払いしといてね」
ひき止める為に立ち上がったグミの手に、瑠璃子は10000円札を握らせた。
「待って、るりちゃん!多いよ。多すぎるよ!」
「いいから。余ったら、ボトル入れて
おいて。涼ちゃんが、私の好みわかってるから。じゃあ、ほんと、ごめんね」
私達の様子に気付いたバーテンが、見送りに来てくれた。
「瑠璃子さん、もうお帰りですかっ?」
「うん、ごめんね。また、来るから。私は帰るけど、この二人のこと、よろしく野崎くん」
すっかり帰り支度を終えた瑠璃子が、私とグミを指し示す。
「はい。かしこまりました」
野崎君は、こちらに笑顔を向けてくれたが、
明らかに、ガッカリしてるぞ!
「また、すぐ来るから」
コートを着せてくれた野崎くんの手に、さりげな~く触れる瑠璃子。
「あ、あれってすごい技だね。みくちゃん」
「あたしにゃ絶対できないっす!」
こそこそ話す私達の前から、瑠璃子は走り去った。
ところで……。
「あの……、タカシさんて、誰なんですか?」
そう言ったのは、私ではなく、野崎くんだった。
「そうそう、タカシって、何者?」
「やだ~、みくちゃん、忘れちゃったの。星野先生じゃん」
「えっ。あれっ。あの人タカシっていうんだっけ。忘れたよ。名前なんて」
「あの……それは、瑠璃子さんのいい人ですか?」
「そうです」
グミは、そう言い切った。
「ちょっと、いいの?勝手にそんなこと言っちゃって」
「いいんじゃない?だって、恋人でもなく、彼氏でもない。いい人って聞かれたから。るりちゃんにとっては、いい人でしょ?」
う~ん、深い。
さすがグミ。
一瞬でそこまで判断、出来ないぞ、私は。