月に降る雨
「何で……泣いてるの?」
「……みちる、くん……?」
無意識のうちに握り締めてた、
いちごみるく は、すっかり熱で温まっていた。
どの位この場に居たのか分からなかった けれど、
気付いたら、
あたしの目の前には、心配そうに あたしの顔を覗き込む、みちるくんの姿しか なかった。
「…リアちゃん」
みちるくんが遠慮がちに、あたしの名前を呼んだ。
…あたし今、どんな顔してるんだろう…?
―みちるくんに変なとこ見られちゃったな…―
「みちるくん、ごめんなさい。
あたし今、すごい顔してるでしょ!笑
ちょ…とりあえず、お手洗いで直して来ますね。
すぐ戻って来まーす!」
笑顔で そう言うと、
逃げるように、お手洗いに駆け込んだ。
そして個室の壁に背を凭れると、
溜息を1つ、こぼす。
貴には…
ぐちゃぐちゃな泣き顔も すっぴんも、全部 見せていた。
こんな風に お手洗いに駆け込まなくても…よかった。
「……っ」
貴の事を思い出したら、
それだけで自然と涙が流れる。
―貴が居ないのが…辛い―
悲しい、苦しい、痛い。
あたしは個室の壁に凭れたまま、
また泣いた。
―貴は結局、″理由″を話しては くれなかった。
あたしは それ以上 追求する事も出来ずに、
″行かないで″と声に出せずに…、
貴を……行かせてしまった。