月に降る雨




みちるくんには…

初めて会った時から、何となく安心感を覚えていた。


でも あたしには安心感を与えてくれる人が他に居たから、

みちるくんとは、ばったり会った時に話す位で、特に何も なかった。


みちるくんが あたしの事を好きって言ってくれてから暫く会わなくなって…

その間に あたしは一方的に気まずさを感じて…。


今日 会ったら、その気まずさは自然消滅していたのだ けれど、

でも気まずくなる前に戻っただけ だから、みちるくんに恋愛感情を抱いている訳では…ないんだ。


それなのに、

貴が居ないから と 言って…

貴が居なくなってしまった心の隙間を みちるくんで埋めようと する、なんて……。




そんなの、ダメだ。


絶対 駄目。


…そう思って、みちるくん から 離れたのだけれど……。






「リアちゃん……!」




みちるくんの声が後ろから追い掛けて来て、

あたしは思わず振り向いた。




目が合った時、

みちるくんは思わず呼び止めていた自分に吃驚したような、表情だった。






「どうしたんですか…?」




「いや、」




″何でもない″と言い掛けて、みちるくんの動きが止まる。


それから何か考えて…、

覚悟を決めたように息を吸い込むと、ゆっくり話し始めた。





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