月に降る雨
―…そ、そうだ…
看護師さん…!―
あたしは その時に なって ようやく、
ナースコールの存在を思い出した。
でも…、
かず兄の後ろにあるナースコールは、
かず兄を越えて行かないと、どうにも押せそうに、ない。
そんな事を する前に、
かず兄は きっと動いてしまうだろう。
あたしが下手に動いたら、絶対に駄目だ…
そう、思った。
「…ねぇ、リアは どっちを取るの?」
ナイフを当てたまま、かず兄は あたしの目を見て言う。
―分かんない……―
「分かんないよ…。
でも今は…
目の前に確実に かず兄が居て、こんな事してるんだもん。
目に見えてる人を助けるに決まってんじゃん…。
今は、かず兄を止めるに決まってるでしょ!?」
あたしは いつの間にか泣き出していた。
―何で かず兄は こんな事を するの…。
涙が、止まらない。