月に降る雨
もやもや した気持ちを抱えたまま夜は更けて、
眠れない あたしは、
かず兄が寝ているのを確認して、病院を抜け出した。
時々 車は通るけれど、
都会とは ほど遠い この街は、静まり返っている。
気分が少しでも晴れたら、かず兄の病室に戻ろうと決めて、
あたしは冷たい空気を胸いっぱいに吸い込むと、当ても無く歩き始めた。
…だけれど。
歩いても歩いても、
風に当たっても、何をしても、
気持ちは晴れるどころか、
むしろ どんどん気が狂いそうな程に、曇っていった。
―……………―
そして、
あまりの胸苦しさに
わぁーっと頭を掻きむしりたい衝動に襲われた時、
あたしを慰めて欲しいと、頭に浮かんだのは………。
頼りたかったのは、
優しく笑って、頭を ぽんぽん って して欲しかったのは、
やっぱり……。
………貴、だった。