月に降る雨




ポケットに入っていた携帯を取り出して、

あたしは貴に電話を掛けた。






″さよなら″を言わずに行こう と してた位だから、

出てくれないかも……しれない。


貴の顔が思い浮かんだ瞬間 思わず溢れた涙も、

その不安で、一気に引いてしまった。






「…………」




ツー…ツー…ツー…




幸か不幸か、

耳に当てたスピーカーからは、

予想に反する お話中の機械音が流れてきた。




一瞬 気が抜けてしまったけれど、

でも それは すぐに、

誰と話しているのか…

終わって あたしの着信に気付いても無視されるんじゃないか…

という不安にとって かわっていった。






それから何度か掛けても、

貴の電話は通話中のまま だった。





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