月に降る雨
「………貴!?」
『………。
リア…?』
祈る様に掛け続け……、
何度目かの電話で、ようやく聞き慣れてきた機械音が、変わった。
その音が止まるのと ほぼ同時に電話に向かって叫ぶと、
貴は…暫く沈黙して居たけれど電話を切る事なく、低い声で あたしの名前を、呼んだ。
「貴……」
『…何?
…どーしたんだよ 笑』
あたしが なかなか話し始めないのを感じ取って、
貴が穏やかな調子で言った。
その声を聴いて…すごく安心する。
もう…出てくれないか と、思ったから。
「…ねぇ、貴。
あたし ずっと、貴の携帯に掛けてたんだけど?」
『え、マジ?
悪ぃ、ずっと電話してた』
「そうみたい、だね 笑
今は もう いいの?」
『うん。
今、暇 笑』
「…そっか。
あたしも今、暇 笑」
声を聴いただけで、″出てくれた″っていう安心感も混じって…
気持ちが信じられないくらい、穏やかに なっていく。
思わず あたしは その場に座り込んだ。
昼間だったら迷惑…と言うか変わった人に見られる と 思うけれど、
田舎の夜の歩道には、誰も居ない。
街灯に寄り掛かるよう にして、あたしは空を見上げた。
月が、高い。