月に降る雨
…会いたい理由は、知ってた。
貴に嫌われた訳じゃなくて よかった。
どんな意味であれ″好き″って言ってくれて嬉しかった。
焦って とりあえず納得したような返事をした後、
もし伝えられるなら、本人に こんな事を言いたかった。
…本当は。
でも何も言う間もなく、
あたしの目の前は、一瞬で真っ暗になった…
…気が、した。
『リア!?』
異変を察知した貴の、
すごく慌てた様子で叫んでくれてる声が、する。
「貴っ!!」
あたしも必死で受話器に向かって叫んだけれど、
電話は あっさり と 取り上げられ、声は突然、ぷつっ と、途切れた。
「………」
″返して″なんて、言える訳も無く。
ただ恐怖で固まって、何も出来ない あたしの目の前で、
携帯は道路に叩きつけられ、無惨に壊れた。
「………」
―……最悪…―
目の前には この前と同じ面子…、
正確には真優さん以外の3人…が、揃って居た。
…3人で、遊んでたのかな。
それで たまたま、今の会話 聞かれちゃったのかな…。
そんな事を ぼんやり思っていると、
1人が本当に憎々しげな顔で、言った。
「………お前、マジうぜぇ」
「今度こそ、死んで」
「…つか何で、
貴史くんは こんな奴が いいんだろね」
誰かが、嘲笑うように そう言うと、
「違ぇーよ。
こいつが勝手に付き纏ってるだけで、
貴史は全然、相手に してないから」
代表格、みたいな女の子が冷たく、言い放った。
「…………」
「お前さぁ、
ブスの癖に、調子 乗んじゃねーよ」
1人が、あたしの顎を掴む。
それを見た代表格の子は、
楽しそうな顔で、笑って居た。