月に降る雨




相変わらず優しそうな笑顔だったけれど、

その時、あたしは

カフェオレさんの様子が前回とは違うような、気がした。


それが何なのか までは分からなかった けれど…、


全体の雰囲気は同じなのに、

″何か″が違う気が、した。






「…よく この病院 来るんですか??」




違和感を抱きながらも、やっぱり会話が途切れるのが怖くて、

あたしは とりあえず質問を繰り出した。






「うん、

ちょっと通ってて…」






…それ って、″通院″って事かな?


それとも…




「…誰かの お見舞い、で…??」




あたしが そう訊くと、カフェオレさんは少し困ったような顔で、首を振った。






「ううん。


…″リアちゃん″は、″かず兄″の お見舞いでしょ?」




「な、なぜ それを…」






「色んな人から教えて貰ったんだ。


リアちゃん…みんなのアイドル、なんだね」




邪気の無い顔で、カフェオレさんが言った。






「いやいや、そんな事ないっす!」




女の子にしても おかしくない位 可愛らしい顔のカフェオレさんに そう言われても、

正直 複雑だ。


ぶんぶん と、顔と手を思い切り振って否定したら、

カフェオレさんは柔らかく微笑んだ。






「…みんなから″愛されてる″って感じが して、羨ましいな」






…もしかして、褒められてる…?




確かに、あたしは よく″アイドル″って言われてた。


もちろん いい意味で言ってくれてる人も居たかもしれない けれど、

大抵、嫌味で言われてた。


だから今でも、あたしの中では″アイドル″は、褒め言葉じゃない。


でもカフェオレさんは、何となく褒めてくれてる感じが伝わって来たから、

あたしは否定してしまった けれど、とりあえず お礼を言ってみた。






「あのー、

自分で自分の事アイドルとか思ってる訳じゃないです けど…、

…ありがとうございます 笑」




そう言うと、

カフェオレさんは やっぱり優しい顔で、笑った。





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