月に降る雨
「……貴…?」
…久し振りに、貴を見た。
最初は同じ学校に行けば簡単に会えると思っていたのに、
入学してから1度も、校内で貴を見掛ける事は なかった。
…″貴史ファンクラブ″の会員さんには、
やたら お目に掛かるのだけれども…。
まだ名前も覚え切れていないクラスの女子達が何回も、
″宗谷 先輩って格好よくない?″と話しているのを、聴いた。
入学したての1年生で これだから、
貴の この学校での人気は、相当なんだと、思う。
「…貴、やっと会えたね」
単純に、
ようやく貴に会えた事が嬉しくて、
あたしは正直に感想を口にした。
でも それに対しての貴の反応は、想像していた最悪のパターンと同じで…、
嬉しさの欠片も感じる事は出来なかった。
それどころか、
冷たい表情で、あたしと喋るのが面倒だとでも言うように、
溜め息を吐きながら言った。