月に降る雨




6時の、かず兄の夕御飯の時間が来て、

あたしは売店で買って来たパンを、かず兄と一緒に食べた。


春休み中は、毎日 毎日 昼間に来て入り浸っていた けれど、

学校が始まってからは、

部活にも入らず、放課後に病院に直行して、

一緒に夕御飯を食べてから帰る日々が、続いていた。


いつもは そんな事を していて、大体 帰りは7時くらい なのだけれど、

それでも貴に会わない という事は、

貴は それよりも遅い時間に来てるか、昼間に来てるか、なんだよね…。


今日は何だかんだ で おしゃべり していたら8時近くに なってしまって、

″もしかしたら貴も来るかな?″なんて思いながら、

夜用の出入口から、外に出た。


…出た瞬間、

冷たい風が、頬に当たった。






「うぅ…

寒っ」




思わず、声が出る。


春だけれど、

あたしの住んでいる地域の夜は、まだまだ、寒い。


寒いから、体が縮こまってしまって、

あたしは全体を見渡せないでいた。


だから、自分の視界に入っていない場所から声が聴こえて来た時、

飛び上がる程、吃驚してしまった。





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