月に降る雨
みちるくんと2人で、近くのカフェに入る。
病院から近いから、
いつも患者さんや面会に見えた方とかで賑わっている けれど、
夜だから そんな事もなく、お客さんは まばら だった。
「カ…じゃなくて、みちるくんは何が良いですか?」
音楽だけが響く静かな店内で、
メニューを眺めながら、訊いてみた。
…って さっきから みちるくんの名前を どんだけ間違えるんだ、自分。
「…リアちゃんは、何が良いの?」
みちるくんは まだ決まっていないのか、
逆に訊き返して来る。
「ん?
えーと、りぃはね~…」
自然に そう口に出して、
次の瞬間、あたしは固まった。
…あれ?
″りぃ″って……。
かず兄や貴の前では気が緩んでて、時々ぽろっと言っちゃう事は あるけれど、
初対面の人とか目上の人には気を遣ってるから、まず出ない
…筈、だった。
……みちるくんには、気 遣ってない…のだろうか…?笑
首を傾げる あたしを見ても みちるくんは特に気にする様子もなく、
相変わらず にこにこ笑って、あたしの返事を待ってくれていた。