月に降る雨
「…ごめんっ!
大丈夫!!?」
中から出て来た男の子が、
慌てたように そう言うのが、聴こえた。
低くてハスキーだったけれど、
喋り方の所為か とても明るい印象を受ける その声に、思わず顔を上げる。
「ごめんねー、吃驚したっしょ」
背の低い あたしよりも少しだけ高い位置で目が合うと、
男の子は笑った。
そして急いでいるのか、あたしが何ともない事を確認すると、
すぐに″じゃね″って走り去ろう とした。
「センセー、
話 長いから気を付けてね!」
すれ違いざま に そう言って笑って、
風みたいに あたしの前から居なくなった。
あたしは暫く、元気よく走って行く彼の後ろ姿を、
吸い込まれるように眺めていた。