月に降る雨




「…ごめんっ!


大丈夫!!?」




中から出て来た男の子が、

慌てたように そう言うのが、聴こえた。


低くてハスキーだったけれど、

喋り方の所為か とても明るい印象を受ける その声に、思わず顔を上げる。






「ごめんねー、吃驚したっしょ」




背の低い あたしよりも少しだけ高い位置で目が合うと、

男の子は笑った。


そして急いでいるのか、あたしが何ともない事を確認すると、

すぐに″じゃね″って走り去ろう とした。






「センセー、

話 長いから気を付けてね!」




すれ違いざま に そう言って笑って、

風みたいに あたしの前から居なくなった。


あたしは暫く、元気よく走って行く彼の後ろ姿を、

吸い込まれるように眺めていた。





< 38 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop