月に降る雨
「………」
他の人に言われたら言い返す…かもしれない けれど、
かず兄の柔らかい、満面の笑みで言われると、
…何も言えない。
大人しく黙り込んだ あたしに、坂城さんが笑った。
「ううん、
そんな事、ないですよ。
私も深谷くんの お部屋に来る時、
リアちゃんに会えるの、楽しみ だから」
「ほんと ですかー!?
わぁい♪
坂城さん、ありがとーございますぅ♡」
誉められて嬉しくて、飛び跳ねそうな勢いで そう言ったら、
いよいよ かず兄が苦笑気味に なって、言った。
「あんま、喜ばせないでください 笑
あとが大変なんで」
「それは、失礼 致しました 笑
でもリアちゃんは私達の中でも評判なんですよ。
お人形さん みたいに可愛くて…、患者さんも喜んでるし。
あ、そろそろ私 行きますね!
…じゃあリアちゃん、またね。
今日は一緒じゃない みたいだけど…、
彼氏にも よろしくね」
「……彼氏??」
思わず聞き返したら、
お仕事に戻ろう とした坂城さんの足を、また止めてしまった。
忙しいのに、ごめんなさい…。