月に降る雨




でも暫くして、血の臭いとは別の、

甘い、嗅いだ事のある香りを頭の奥で感じた時、

あたしは ようやく状況を理解した。






「……貴…?


貴、だよね?」






「………馬鹿」




あたしを包んでる腕に、力が入った気が、した。




そこら中 痛かったけれど、

貴の体温が あたたかくて、

その瞬間、あたしは何かが ぷつん て、切れたのが分かった。






「…貴ぁ」




恐怖から じゃなくて、安心感から来る涙が、止まらなかった。


貴は ずっと″ぎゅー″って してくれていた けれど、

そのまま何度も耳元で″リアの馬鹿″って呟いてた。




″馬鹿 馬鹿 言い過ぎ!笑″って、いつも みたいに笑って返したかったのに、

あたしの口からは、嗚咽しか出て来なかった。





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