月に降る雨




「…あ、俺ほんと最後の方だったし、

診察もして貰ってたから。


…そんなに待ってない、よ?」




あたしの言いたい事が分かったのか、

みちるくんが慌てたように、言った。




…うん、相変わらず嘘が下手…。笑


最後の方に診察して貰ってる って いうのは本当かもしれない けれど、

″待ってない″って いうのは、明らかに嘘だよね?笑




でも そんな嘘を吐いちゃう みちるくんが可愛かったし、

何だかんだ ずっと待っててくれたのも嬉しかったから、

あたしは笑いながら言った。






「…うん、そっか。


なら よかったですー笑




…みちるくん、これから予定は?


折角だし、よかったら どっか行きません??」




あたしが そう言うと、

みちるくんは一瞬 驚いたような顔をした けれど、

また にこにこ と、可愛らしい笑顔を浮かべた。






「…うん!」




「でも この時間だと ご飯には ちょっと早いかなぁ…。


…どうしよう、

また この前の お店でも良いですか??」






「…うん!」




本当に良いと思っているのか疑問だったけれど、

やっぱり みちるくんが にこにこ笑ってくれるから、

あたしは病室に戻って、かず兄に″やっぱ出掛けて来るね″って断りを入れると、

みちるくんと一緒に病院を出た。


″男の子と出掛けて来る″って何となく察した かず兄は、

最初は吃驚したような顔を していた けれど、

最終的にはお母さん みたいに″うん、うん″と、嬉しそうに頷いていた。




あたしの気持ちを知らない訳だから、その反応は当然と言えば当然なのだけれど…、

そんな かず兄を見るのは、やっぱり少し辛かった。





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