月に降る雨
「…何、それー」
かず兄に そんな事 言われても全然 嬉しくなくて、
あたしは むくれて そう言った。
そんな あたしを見て、かず兄は また笑った。
「ほんとリアと貴史って、喋り方まで似てるよね。
…付き合ってる って言うか…、
何か、兄妹みたい 笑」
「どこが~!?
あんな うるさい お兄ちゃん、疲れちゃうよ~」
…あたし確かに よく喋るけど…、
好きで喋ってるんじゃないもん。
その場が しーん と してたら、盛り上げなきゃ って思うだけで、
元々 喋るのが好き って訳じゃ、ない。
貴の おしゃべり は 天性だと思うけれど、
あたしのは″気遣い″なんだもんっ。
…そんな事を思っていたら、自然と口が尖っていたみたいで、
かず兄に やんわり と 注意された。
「…こらこら 笑
そこまで毛嫌いしたら、貴史が可哀想でしょ」
「…はぁい、ごめんなさい」
結局かず兄に″嫌な奴″って思われたくなくて、
あたしは聞き分けの良い子を演じる。
…″演じる″って いうのは、ちょっと違うかな?
貴には本当に悪いと思って謝ってる訳だから…。
でも多分、
貴には何でも言えるけれど かず兄には気を遣ってしまう…
…そんな感じなんだ と、思う。
あたしは かず兄が大好き だけれど、
大好き だからこそ、言えない事が たくさん ある。
だから って、勿論 貴の事が嫌いな訳じゃない…けれど、
貴には何を言っても怒られない っていう安心感が あって、
それが かず兄との決定的な違いなんだ と、思う。