月に降る雨
「…リアちゃん」
「はい?」
みちるくんが静かに、少し息を吸い込んだ。
「俺の好きな人ね、」
「好きな人…?」
…って まさか、
お亡くなりに なった方の事を、あたしに話してくれるのかな…?
…そう思って、あたしは ごくり と 唾を呑み込んだ。
「そう、…好きな人。
俺の好きな人は…、
俺の事、嫌いだと思う」
「え…?」
「明るくて、いつも人に囲まれてるような人で…、
鬱病の俺とは、天と地くらい違う人だから。
…だから、俺の事 知ったら、引くんじゃないか、って…。
最初は見てるだけで、良かったんだ」
「みちるくん…」
「…でも その人は、話し掛けたら振り向いてくれた。
鬱病って言っても、引かなかった」
「そう なんですか…」
「初めて見た時から、好き だったんだけど。
…でも、その性格を知っても、すごく好きで」
「…そう、なんですね」