月に降る雨
人間の治癒力って すごいもので、
あたしの傷は痕だけを残して、痛みは殆ど なくなっていた。
心の中に刻まれた傷は、思い出すと まだ痛いけれど…。
でも それは もう、どうしようも ないものだ って、
半分 諦めていたから、平気だった。
どうせ、また苛められそうに なったら、思い出す。
普段は忘れているけれど、
また同じような状況に なったら思い出す…
…それが″当たり前″だって、割り切っていたから。
みちるくんには、
まだ薬が終わっていない所為だと思うけれど…、
あれから1度も、会っていない。
会って、また元のように仲良く話したい気もする けれど、
まだ怖いと思う気持ちも あるから、
病院で ばったり出くわさないのは、正解なのかも しれない。
体の傷は治って来たけれど、
きっと心の傷は、
みちるくんを見たら また痛み出すんだろうな…。
苛めの″トラウマ″とは別だけれど、
みちるくんの顔を見たら、まだ きっと、痛い。
みちるくんを″好き″な気持ちと、
かず兄を、″好き″な気持ち…
その2つの感情の狭間で、
あたしは自分の気持ちが よく分からなく、なっていた。
みんな、ただ誰かを好きに なっただけ なのに、
好きに なっただけで、何で こんなに苦しいんだろう…。
好きな人が、自分を見てくれないから…?
…でも、
今の状態じゃ、誰か1人が見てくれたって、みんな幸せには なれない。
結局その裏で、誰かは、傷付く。