月に降る雨




「リア?」




「…かず兄?」




考え事を していた筈なのに、

足は自然と かず兄の病室に向かっていた…みたい。


気付いたら、ぼんやり した頭の中に、かず兄の声が聴こえた。






「どうしたの?


何か あった?」




「ううん、何も ないよ」




反射的に そう答えたら、その後に、なぜか声が もう1つ聴こえて来た。






「リアちゃん、大丈夫??」




…そして、あたしが その声を誰の声か認識する前に、もう1つ。






「何か、ぼーっ と してる…みたいだね」






…あれ?




あたしは その時になって初めて、病室の中の状況に気付いた。




…病室の中に、かず兄の他に2人 居る…。


今度は しっかり脳に認識させるように、2人の顔も見た。






…女の子が1人と、男の子が1人。




女の子は凛 先輩で…、男の子は…


…あたしが日誌を持って職員室に行った時、ドアの前で ぶつかった、あの男の子だ。





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