月に降る雨
…あ、急がなきゃ!
のんびり迷ってる場合じゃないよね…。
「…とりあえず、カフェオレにしよ!」
と、なぜか口に出しながら、ボタンを押した。
その後 出てきた缶を素早く掴んで、
「すみません、お待たせしました」
って、後ろの人に頭を下げて立ち去ろうと したのに、
その後ろの人の声が、あたしを呼び止めた。
「……ねぇ。
それ、ブラックだよ?」
「え!?
…あ、ほんとだ」
どこを どう間違えたのか、
あたしの手の中にはカフェオレではなく、
ブラックが しっかり と 握られていた。
「あ~、飲めないの買っちゃった…笑」
あたしが照れ笑いすると、
後ろの人が、大きな目を更に見開いて、不思議そうに首を傾けた。
「ブラック、飲めないの?」
「…はい 笑
よかったら…
飲みますか?」
とても とてもブラックを飲むような顔立ちには見えなかった けれど、
あたしが持っていても飲めないし、
かず兄にも刺激物を与えない方が良いような気がして、
あたしは その人に缶を差し出してみた。
「ほんと!?
いいの?
俺、ちょうどブラック買おうと してたんだ!
じゃあ代わりに、カフェオレ買ってあげるね」
「…ありがとうございます♡」
全然 知らない人なのに、お互いの飲み物を買い合うなんて、
何か面白いな~って思って、あたしは笑った。
その人も にこにこ と 笑ってて、
すごく優しそうに、見えた。