月に降る雨




かず兄は きっと、

あたしが″大丈夫″って言ってる時は ほとんど大丈夫じゃない時だって、

気付いてない。




貴だったら そういうのに全部 気付いてくれて、心配してくれるのだ けれど…、

きっと かず兄は、これからも ずっと、気付かない。




かず兄が そういう事に気付くのは…、

かず兄が心配するのは…、

あたしじゃ、ない。




好きな人の事を、目の色 変えて心配する…そんな かず兄を見る前に、

自分の気持ちが整理 出来れば良いのに…。




…あたしが そんな事を考えていると、

今まで黙っていた例の男の子が、

その場の空気とは全く違う、明るい声音で、あたしに話し掛けて来た。






「…ねぇねぇ!


俺の事、覚えてる!?」




「…あ、はい。


この前 職員室から、急いで出て来た人…ですよね?」






「そうそう、急いで出て来た人!笑




でも ほんとは″はす″って書いて″レン″って言うんだー。


みんなからは″ムニーさん″って呼ばれてるけど…」




「そ、そうなんですかー」






………。


…って…、…ん?


なぜ、″ムニーさん″??




反射的に返事を してしまった けれど、

その後に、じわじわ と、疑問が沸き上がって来た。


″でも そんなに話した事もない人に訊くのもなぁ…″と思って黙っていたのに、

結局 顔に出てしまっていたらしく…、

それを見た蓮さんが、笑いながら話してくれた。





< 90 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop