月に降る雨
「りぃちゃんは、藤崎ちゃんの事は知ってるよね?」
「あ、はい」
「俺と藤崎ちゃんは、バイト先が一緒なんだー」
会話が途切れないように気を遣ってくれて いるのか、
ムニーさんが続けて そう言った。
「…そうなんですかー」
もしかしたらムニーさんは、
クラスでは″うるさい人″っていうポジションかも…しれない。
でも あたしにとってムニーさんの空気は、
″うるさい″とか″にぎやか″とか ではなく、
″癒される″気が、した。
さっきまで、かず兄と凛 先輩の事を考えて心が痛くなっていたのが、
ムニーさんと話して気付いたら、すーって無くなっていたから。
これだけ ずっと口を開いてる人なのに、
″うるさい″っていう空気を感じずに癒し系のオーラを感じる なんて…
ムニーさんって凄いと、単純に思った。
明るくて優しくて、
何だか、太陽みたいな人…。
「自己紹介も済んだ所で…、
うちら、そろそろ帰るね。
…あ、リアちゃんは ゆっくり してってね」
あたしがムニーさんを見ながら、そんな事を考えていると、
それを遮るかの ような、凛 先輩の声がした。
「…あ、はい!
ありがとうございます」
何だか慌てたような凛 先輩の様子に違和感を覚えつつも、あたしは返事した。
「かずみくん、りぃちゃん、またね~」
ハスキーボイスで元気いっぱいに、ムニーさんが言った。
「…はい、またー!」
「今日は、ありがとう」
ムニーさんと話していると、自然と笑顔になる。
かず兄と笑顔で、2人を見送った。
でも ふと横の かず兄を見て…
かず兄の、凛 先輩に向けられた視線を見て…、
あたしは居たたまれない気持ちに なった。