月に降る雨




「…かず兄、あたし……

ちょっと外 出て来る!」




「ええー?


今 来たばっかじゃん 笑」






「また戻って来るよ~笑」




…そう。


怖くても、傷付くって分かってても、

あたしは必ず、かず兄の所へ戻って来る。


しかも多分 無意識に。


…ほんと、何とか して欲しいよ。笑




心の中で こっそり文句を言って…、あたしは病室を出た。






…飲み物 買って、中庭のベンチで景色でも見て…、

一息 入れてから また戻ろうかな…。


休憩所(?)の前を歩きながら、そんな事を考えて、

あたしは そのままエレベーターに向かわずに自販機に向かった。


ぼんやり飲みたい物を考えて、何となく いちごみるく を 買った。


…甘くて、コテコテした物が、飲みたかった。




何だか現実から逃げられそう だったから。




でも、甘くて可愛いパッケージを見ていたら、

急に甘い物が好きと言う、みちるくんの顔が脳裏に浮かんだ。






―そう言えば みちるくん、いちご好き だったな…―






「…みちるくん、元気かなぁ…」




思わず、声に出して呟いていた。


完全に独り言だったから、

返事が返って来るなんて、思いもしなかったのだけれど…。




…突然、声がした。






「…″みちるくん″って、誰?」




「……貴…!?」




気付いたら、

不敵な笑みを浮かべた貴が…目の前に、立っていた。





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