4月1日の偶然少年A。
「うっ…」
空はうめき声をあげ、ゆっくり目を開いた。
目を開いた先にはサヨナラしたはずの大嫌いな世界が広がっている。
ここを俺は知っている。病院だ。
空が目を開いたまま白い天井を見つめていると、突如見知らぬ女がのぞきこんできた。
「目が覚めましたか!?」
ー当たり前の質問をするな…目を開いているんだから起きているだろう…
空はいらいらしたまま輝いた目でこちらを見てくる看護婦に小さくうなずいてみせた。
そしてこちらもわかりきったことを質問する。
「ここは…?」
看護婦はにっこりと笑うと口を開いた。
「ここは病院ですよ。あなたは昨日の電車事故で
"唯一"生き残った人なんですよ!しかも無傷で!」
「…は?」
空はぽかんとして、記憶をまさぐった。
そういえば、おかしい。
俺は右足を潰され、体中に傷を負ったはずだ。
それどころか死ぬのを感じたはずだ。
なぜ、生きているんだ…!?
「俺、右足をケガしてましたよね…?」
空は震えだした体をおさえ、かれそうな声で言う。
けれど看護婦はきょとんとして予想とは違う言葉をはいた。
「いえ…まったくの"無傷"でしたよ?」
唇がわなわな震えて喉が震えた。
何か言おうとしたけれど口から言葉はでない。
空は頭をかかえ、叫んだ。
「俺は死んだはずだ…っ!生き返りでもしたっていうのか!?」