4月1日の偶然少年A。
次の日、空は退院して病院を出た。
昨日の錯乱ぶりから心配され、もう2,3日の入院をすすめられたが、断った。
今はそんなことをしている場合ではない。
自分の身に何が起こっているのか確かめなければならない。
昨日の夜少し落ち着いて考えたが、自分の体はどうやらおかしな現象にとらわれているらしい。
そして、あの夢。
夢のなかの声は"千年"と"嘘"と"死ねない"という言葉を繰り返していた。
このなかでひとつわかったことは今の自分はなぜか死ねないことだ。
そう、死ぬほどの致命傷を負ってもその傷はすぐに癒え、
死ぬことはできないらしい。
空はゆっくりと自宅へ向かう。
たった一人生き残った俺のもとにマスコミやらなんやらが
病院におしかけていたが、適当に答えてあしらった。
そんなものと付き合っているほど、心の余裕はない。
空は自宅のマンションにつくとともにベランダの扉を開いた。
「昨日のことは嘘だ…そう、嘘だ…」
そう呟き、俺はすぅっと目を閉じる。そして。
ベランダから身をほうりだした。部屋は充分に死ねる高さの階だ。
今まで簡単に出来なかった自殺行為をこうも簡単にできるとは。
俺はそんなことを考えながら笑い、浮遊感を味わう。
そしてすぐに空の体は頭から思い切り地面にたたきつけられて鈍い音をならした。
鈍い痛みに目の前がまっくらになり、身体中が軋む。
けれど数秒後、頭の痛みは消え失せて視界が明るくなる。体はもう軋んでいない。
「………。」
空は無言でため息をつきながら体を起こす。
気が狂いそうな気分で頭をかきむしる。
空は無言でふらりと立ち上がって階段をのぼる。
ありえない。こんなことはありえない。大丈夫、死ねるはずだ。
空は叫びだしそうになるのをこらえて部屋に戻ると
深く息を吐き出して決心した。
もっと、確かめる必要がある…