4月1日の偶然少年A。
「いい加減にしてくれよ…!」
俺がそういい、喉にそれを突き刺そうとした瞬間。
「だめっ!やめて!早まらないで!!」
そんな叫び声が玄関から響き、俺の動きを静止させた。
空はくるりと振り向き、その声の主を見た。
いつの間に部屋に入ってきたのか、長くてふわふわとした癖のある黒髪の、
小柄な少女が焦った声で叫んでいる。
(誰だ、この女?)
少女は何の躊躇もなく俺に歩み寄り、あわてて包丁を取り上げる。
それを向こうへ押しやるとようやくほっとため息をもらした。
そしてぽかんとしている空をよそに少女は必死だったのか、走ってきたのか、
汗をかいた額を必死にぬぐっている。
俺は頭を抱えて首をかしげる。
そしてじろりと少女を睨み付けて唸るように言った。
「お前、誰だよ」
少女はびくりと背筋をふるわせた。