4月1日の偶然少年A。
息をきらせながら走り、まず向かったのは事故のあったところ。
あちらこちらに警察官などがいた。
事故が起こったのは昨日。
だとすると彼はどこにいるだろう。
琴葉は必死に考えて、病院だという結論にたどりつく。
無傷だったとしても必ず病院に居るはずだ。
琴葉は最寄の病院に向かって走り出す。
やっとの思いで病院の前までやってきたとき、
病院からすごい勢いで走り出てきた少年とぶつかりそうになった。
そのひとは病院で患者さんがよくきているあの服のまま、
裸足で交差点に向かってつっこんでいった。
クラクションの音とブレーキ音が辺りに鳴り響き少年を避けようとする車たちがあちこちに溢れる。
少年は交差点をつっきり、道路の角を曲がった。
その瞬間、ドンと鈍い音がして。
私は思わず悲鳴をあげそうになった。
あの少年は今まさに、バスに撥ねられた。
それを私は確実に目撃している。
今まさに人が死ぬのを見てしまったのだー...
けれど。
少年は死んでいなかった。
琴葉は自分の目を疑った。けれどやっぱり彼は生きている。
呆然としている琴葉の横を警察官や医者がとおりすぎ、
少年を抱きかかえてまた私の横をとおった。
「-...あ」
そして。確かにみたその少年は。
ニュースで見たあのひとだった。