4月1日の偶然少年A。

琴葉は泣きそうな顔でこっちを見た。
でもそれ以上は何も言わず、ただ何かを探すためにかばんをさぐった。


空はそれをじっと見つめて待つ。


「あの、瀬川さ…」

「なぁ」

琴葉がそこまで言ったところで俺は制止をかけた。
琴葉が少し驚いてこっちを見る。


空はただじろりと琴葉をにらみ、それからすぐ視線をそらせて言った。

「その瀬川さんっていうのやめてくれるか?俺、自分の苗字嫌いなんだ」


そういうと琴葉は黒いひとみをきょとんとさせたのち
不思議そうに首をかしげながらもうなずいた。


「わかりました…じゃあ、空?」


呼び捨てかよ。
俺は一瞬そう思ったが言うのが面倒になってやめた。

どうせ呪いを解くまでの付き合いだ。


「いいよ。苗字以外なら何でも」


そう言うと琴葉はうれしそうに笑ってうなずく。
そしてまた質問を投げかけてきた。


「敬語…やめてもいい?」


俺はどうでもよかったので適当にうなずいた。
いつの間にか暮れはじめた太陽が赤い。


夕焼けをみながら空はぼぅっとする。


何やら琴葉はうれしそうに微笑み、再びかばんをあさる。


何でこんなことになったんだろう。
何で俺なんかが選ばれたのだろう。


夕日が沈んで暗い闇が影をおとした。
空のなかにはそんな思いがゆらゆらとしていて。



「あったよ、そ、そら!」


そんな彼女の言葉に俺のかんがえは遮られる。
琴葉の手には一枚の写真があった。


「…外国人、か?」


そこにうつっていたのは銀色の髪をしていて、
青い瞳と黒い瞳をしたオッドアイの小学生くらいの女の子だった。




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