孤高の魚
『気をつけて』
ああ、確かに。
僕は今、そう言った。
ふと、今朝見た夢を思い出した。
………
「そういえば、歩太の夢を見たよ」
僕はコーヒーでパンを流し込む。
「本当? どんな?」
野中七海の顔が、パッと輝いた。
「どんな……って事もないけど……」
「あーー……」
「なに?」
「それ、悪い癖だよ。曖昧な答えの方が、相手が適当に解釈しやすいと思ってるでしょう?」
僕はドキリとした。
そんな風に正面から、誰かに自分の癖を注意された事など、僕は今までに一度もなかった。
しかも、昨日出会ったばかりの女の子に。
「アユと一緒。嫌じゃないけど、ちょっとずるいね」
彼女の言葉の語尾が、ちょっとだけ強い。
「わたしはそうゆうの、慣れてるけど」
それからそう言って、彼女は笑う。