孤高の魚
「……ああ」
僕はまた曖昧な返事で答える。
彼女の言っている事は、どこまで本気なのだろうか。
「これからは……ここが、アユと、わたしの居場所になるの」
ブルーのノートを指して、彼女はそうハッキリと言う。
……居場所?
歩太と、野中七海の居場所?
そのノートが?
「……と、ゆうと……?」
気がつくと僕は、マグカップを持って立ったまま、座る事もコーヒーを啜る事も忘れていた。
野中七海の細い煙草も、長い煙を上げて灰皿の中で灰になっていく。
「そのまんまの意味よ」
キッパリとそう言い切って僕を見上げる彼女の視線に、僕は何も言えない。