孤高の魚
僕は黙ったまま彼女の向かいに座り、次の言葉を待つ事にする。
「今日はね、COMでアユと一緒に働いてた、三枝って人と会ったわ」
三枝?
ああ、あの、見かけはまあまあいい男なのだけれど、あんまりお客には好かれない店員の事だな。
僕は比較的小綺麗な三枝という男の顔を思い出してみる。
笑顔にどこか、嫌味がある。
「でも、全然駄目だった。あの人、アユの事を自分と比較してしか見ていないんだもの。……つまらない話ばっかりだった。このノートに書ける事は、ほんの少しだけ」
「……比較?」
「そう。俺よりはどうだった、とか。俺の方がどうだった、とか。そんな事ばかり、言うの」