孤高の魚
明日、僕は一限目から大学の授業がある。
いつもなら九時前には家を出る。
尚子もそれは知っているはずだ。
知っていて家に来る?
尚子はあんなだけれど、僕の大学の授業を邪魔するような事だけはなかった。
課題が立て込んでいて忙しい時も、いつも尚子の方から遠慮してくれていた。
『歩夢にはデザイナーになる夢を叶えて欲しい』
いつか尚子は、そんな健気な事まで言っていたのに。
……何だか妙だ、と思った。
思って、首を傾げながらぼんやり携帯の画面を眺めていると、
「歩夢くん、裏口、閉めちゃうわよ。七海ちゃん、待ってるのよ、早くしなさい」
そう言う小百合さんの声が更衣室の外から聞こえて、
「あ、はい。すいません」
そう言いながら僕は、慌てて着替えた。
………
……尚子のメールはやっぱりどこか変だ。
僕は嫌な予感で胸を疼かせながら、仕方なく、明日は尚子を待ってみる事にする。