孤高の魚
「はい。兄の事、尚子さんに色々聞けたらなって。お邪魔じゃなければ、わたしもご一緒しても、構わないですか?」
野中七海は誰に対しても、いつだってこんな風に真摯な態度なのだから、全くもって僕は感心する。
「まあ……いいけど」
牙を剥かれた訳でもないのに、そんな彼女の態度に、尚子が妙にたじろいでいるのが面白い。
それから三人でダイニングテーブルに着き、野中七海が入れてくれたコーヒーを啜った。
黙ったままの三人の間には、居心地のあまりよくない緊張感が漂う。
いつの間に買い置きしてあったのか、ヨーグルト風味のレーズンが小さな白い器に三つ、野中七海によって各々に用意されていた。