孤高の魚
「あーっ、懐かしい。
これ、歩太、好きだったよね?
レーズンのヨーグルトがけ?」
尚子がそれを見て、思い出したようにはしゃぎ出した。
「うふふ。アユ、これがないと、機嫌が悪かったもの」
その尚子の無邪気な態度に応えて、野中七海も楽しそうに笑った。
僕もまた、自分のために野中七海が用意してくれたそれを、ひとつまみして口に入れる。
……なるほど、確かに。
これはコーヒーにはよく合うかもしれない。
僕は今まで、歩太がこれを気に入っていた事も知らなかったけれど。
「うわあ。これ、どこで売ってんの?」
「うん、アユのお気に入りはね、無添加良品の……」
「あっ、そこのデイリーマートに置いてある?」
「あ、そうです。デイリーマートの」