孤高の魚
疲れを見せていた野中七海の顔も、暗さを漂わせていた尚子の顔も、段々に僕の知っている明るさを取り戻していく。
野中七海の頬は上気してピンク色に染まり、尚子の口はいつもの饒舌に戻る。
二人の緊張を解したのはやはり僕なんかではなく、ヨーグルト風味のレーズンに姿を変えた、行方の知れない歩太の存在だった。
二人はレーズンを次々に口へと運びながら、隣り合わせのお互いの顔を覗き込んでいる。
僕は……
僕はそんな二人の向かいに座って一人、何だか取り残されてしまっていた。
この疎外感は、思いの外悪くはないのだけれど。