孤高の魚
尚子の語尾がハッキリとしない。
迷いながら、何かを言おうとしているのだけれど、ピッタリとくる言葉が、見付からないのかもしれない。
野中七海の前で、拭い切れない粗雑さの中でも、尚子は妙に言葉を選び始めている。
それは、歩太の前では常に言葉に気を使っていた僕の感覚と、どこか似ているのかもしれない。
………
……
コポコポコポ……
尚子の言葉を待つ沈黙の間、コーヒーメーカーが滑稽な音を立てる。