孤高の魚
『誰の……子?』
咄嗟に僕の口をついて出たのは、自分でも驚くほど酷い言葉だった。
その自分の無責任な発言にさらに僕は狼狽し、口を開けたまま何度もわざとらしい瞬きを繰り返していた。
……こんな時。
男はどんな言葉を用意すればいいのだ?
………
「実はあたしにも、誰の子か、わかんないんだよね……」
溜め息と共に絞り出す様な尚子の声は、か細くて小さいけれど、それでも僕の耳には鋭い響きでもって届いた。
……誰の子か、わからない?
僕の子である可能性も恐らくは0ではない。
僕には、確かに身に覚えがあるのだ。
………
僕は、突然に突き付けられた男の責任に、不覚にも小さく身震いした。
僕は……
僕はいったい今ここで、どんな言葉を用意したらいいのだろう。