孤高の魚
けれども現に、尚子は妊娠してしまった。
そこに……
果たして僕の責任が、全くの0であると言い切れる保証はあるのだろうか。
……ない。
と、僕は思う。
ならば僕はいったい、どうしたらいいのだろう。
「……ああ……」
こんな時でも、僕は溜め息の様な曖昧な返事をする事しかできない。
情けないけれど、僕にはこんな時、全くどんな言葉も見つからないのだ。
………
深い溜め息を吐きながら、尚子が視線を自分の胸元に落として俯く。
尚子が俯く事で、僕は張り詰める緊張感の中でも、ほんの少しだけ深い息を吐く事ができた。