孤高の魚

尚子の居場所

………


……


暫く、僕と尚子の間には重々しい沈黙が流れた。

野中七海が入れてくれたコーヒーは、僕にも尚子にも、もちろんここに居ない野中七海にも口を付けられる事なく、湯気を上げながら段々に冷めていってしまう。


僕は……
僕は野中七海のあのしなやかな言葉が、もしかしたら僕を助けてくれるのではないだろうかと、密かな期待などしていた。

ギュッと結ばれた彼女の唇がほどけて、尚子の悩ましい表情を快活に変えてくれるような魔法の言葉が、スルスルと溢れては来ないのだろうかと。


………


けれどももちろん、そんな都合のいい様にはいかなかった。

現実の中で僕と尚子は取り残され、向かい合ったまま自分達の愚かな責任に苛まれている。