孤高の魚



……それはつまり、この状況の中で、尚子は真っ先に僕を頼ってくれたという事なのだろうか。

正直、素直に喜んでいいのかわからない。


「でもね、あたし、今さっき、決めたんだ」


一呼吸置いてから、そうキッパリと言い切る尚子の声は、不思議だけれど、今ここにはいない野中七海を思わせた。

今の尚子はやっぱりどこか、野中七海の様な真っ直ぐな強さを持ち合わせている。


「あたしね、産むよ。一人で、産む」


そう言い切る尚子の表情には、さっきまでは見せなかった確固たる決意に満ちている。



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