孤高の魚
「だから本当は、親になるのとかちょっと不安……母親って、よくわかんないし。
自然に、子供が産まれたら勝手にさ、母親になれるもんなんかな? わかんないけど」
「……うん」
「だけどね、さっき、ナナミちゃんが言ったみたいに、あたしも、絶対ここだってゆう、自分の城? みたいなの? 欲しいなあって、思ってさ」
「……うん」
「あたしは、やっぱり捨てたくないんだよね、自分の子供……」
そう一呼吸置いてから、尚子は続ける。
「だめかな?」
そうして突然、俯いていた尚子の視線が僕へと向けられた。
………
……だめかな?
尚子はその決断の賛否を、よりによって僕なんかに問うつもりなのだろうか?
「………」
尚子の視線を受けながら、僕はただ……閉口する。